1.colitic cancerのすべて
潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis; UC)、Crohn病(Crohn’s disease; CD)などの炎症性腸疾患を発生母地としたcolitic cancerの発生メカニズムはいまだ不明である。また、UCでは全大腸炎型で発症後10年以上の長期経過例に好発することがこれまでの検討でわかっているが、CDでの検討はいまだ十分とは言えない。前癌病変と考えられるdysplasiaも含め、早期発見を目的とした大腸内視鏡によるサーベイランスおよびその際の生検の重要性が唱えられて久しいが、問題点が多いのも実情である。
colitic cancer発生のメカニズム、早期発見および診断精度の向上にむけた現時点での最適な方法などについて内視鏡的、病理組織学的、および分子生物学的見地から議論して戴きたい。
2.化学療法・放射線療法は
大腸癌治療成績の向上に寄与するか
術後の補助化学療法や切除不能・再発大腸癌に対する化学療法も、新しい抗癌剤の登場とそれら薬剤の組み合わせの工夫により新たな展開をみせている。一方、直腸癌に対する術前放射線治療は以前から行われてきたが、最近は単なる局所再発の予防を目的とするだけでなく、それと同時に過大な手術浸襲を避け、機能温存手術(自律神経温存手術や肛門温存手術)の適応拡大を目的とした方法も模索されるようになってきた。しかし、いずれの治療も医療経済的な問題、副作用、さらに術前放射線治療では術後の早期・晩期合併症の問題があり、検討すべき問題は少なくない。
大腸癌治療成績の向上を期して行われる化学療法や放射線療法の実際をもとに、そのメリット・デメリットなどを含め検討して戴きたい。
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